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幼稚園であそぼ!(3) [幼稚園パフォーマンス]

パントマイムもやろっと

 オープニングにはいくつかパターンを用意してあります。一つは「壁抜け」。ステージを走り回って、いざお客さんに挨拶をしようとすると「見えない壁」にぶつかります。押しても叩いても壁はなくりません。そのうちに壁が押し返してきます。横や上からも迫ってきます。それを色んなパターンで抜け出るマイムです。二つ目は「恥ずかしがり屋の犬」。袖から出ようとすると何かに引っ張られて(手にはペンシルバルーンの端を握っています)袖に入ってしまう。また笑顔で出てくるが、また引っ張られて引っ込む。そのくりかえし。やがてバルーンで作った大きな犬を抱えて出てきます。三つ目のパターンは「出たがりの犬」客席から同じ大きな犬のバルーンに引かれて入ってくるマイムです。後の二つは「ロープ」のマイムの応用です。毎年ではありませんが、演技の助手として大きな犬を作って持っていくことが多いです。1人の演技なので、犬が相手役になってくれるのです。
 マイムの演目にもいくつか種類があります。ここでは二つほど紹介しておきます。
 一つは「スイカ割り」。緑色の丸い風船にスイカのような縞を描いてスイカに見立てます。。手には紙製のオノを持ち、目隠し(実際には見えます)をしてから、スイカ割りをしようとします。子どもたちは「もっと右、もっと左」と声を上げて応援してくれるのですが、無視してステージの端まで行って落ちそうになったり、ステージを降りてお客さんの頭の上にオノをふりかぶったりと、いろんな危ないことをします。しまいにはオノと間違えて大きな犬の尻尾(バルーン)を握り、振り回して床にたたきつけようとします。「ちがう!」という子どもたちの悲鳴に、目隠しをとって見ると犬の無残な姿。ピクリとも動かない犬の身体を抱いて泣いていると、尻尾がピンと立ってよみがえる。喜んで犬を抱きしめ、続けてスイカバルーンを使ったマジックに進みます。「浮く風船」マジックです。 二つ目の演目は「これなあんだ?」。あらかじめ進行の先生と内容について打ち合わせておきます。「これからクラウンさんがやることをみんなで当ててみよう」という先生のアナウンスを合図にパフォーマンスをはじめます。


クラウン お花畑にやって来ます。花を摘み匂いを嗅ぎます。摘んだ花を指差し、耳に掌をかざして、子ども達に無言で「これなあんだ」。
先生    「クラウンさんが持ってるのはなんだろうね?」。
子ども達 「お花!」。
クラウン そうそう正解。それにしてもお腹がすいた。花を見ておいしそう。周囲の 様子を見
て、口に入れようとする。
先生    「あれあれクラウンさん、お腹がすいてお花を食べようとしてるよ」
子ども達 「食べちゃだめー!」
クラウン 食べちゃう。「けっこういける」茎だけ出す。


クラウン 蝶々が飛んでくるマイム。
先生    「あれえ、何か飛んできたよ。なんだろうね?」
子ども達 「ちょうちょ」
クラウン それそれ正解。蝶々花にとまる。つかまえようとするが、逃げられる。ひらひら飛んだ蝶々がクラウンの鼻の上にとまる。つかまえる。お腹すいた。周囲の様子を見て口に入れようとする。
先生    「あれえ、また食べようとしているよ」
子ども達 「食べちゃだめー!」
クラウン かまわず食べようとするが逃げられる。あああ、行っちゃった。


クラウン あっそうだ。客席に背を向け、重い机を前に運ぶマイム。上に四角い形のもの(水槽)が載っている(マイムで見せる)くるりと回って場面転換。顔を伏せて両手で魚のマイム。くるりと回って水槽の中を指差し、掌を耳にかざして「これなあんだ」
先生    「なんだろうね」
子ども達 「金魚ー!」
クラウン そうだよ。くるりと回ってまた場面転換、机の下の引き出しからエサを取り出し水槽に入れる。くるりと回ってまた場面転換、魚たちエサに気付いて浮上する。くるりと回って場面転換、待ちかまえていたクラウンは金魚をつかまえる。金魚暴れて水がはねる。ああ、お腹すいた。周囲を見る。食べようとする。
子ども達 「ダメー!」(最高潮)
クラウン わかったよ。としぶしぶ水槽に金魚を戻す、水がはねてびしょびしょ。水槽の載った机を元(クラウンの後ろ)に戻す。


クラウン  よーし、次はこれだ。
先生   「さあ、今度はなんだろうねえ」
クラウン くるりと回ると疲れた男。手にはカバンを持っている。ドアホンのボタンを押し、ドアを
開け靴を脱ぐマイム。妻に「ただいま。疲れたよ」などと言いながら、カバンと上着、ネクタイを渡す。子どもかけてくる。抱き上げて高い高い。ねだるのでもっと高い高い。さらにねだるので思い切り高い高い。あれ?落ちてこないぞ。ああ、今日は疲れたなあ。とそこへ急に落下。ああびっくりした。じゃあねえ。部屋に入り、冷蔵庫から缶ビールを取り出し飲む。寝そべってリモコンでテレビをつける。ビールを片手に漫才を見て大笑い。さて、これなあんだ?
先生   「今までとちょっと違うねえ。人見たいだよ。誰かなあ」
子ども達 「お父さん、パパ」
クラウン はい。正解。よくわかったねえ。それでは……。

 ここで、お父さんと子どもを探しに客席におります。ステージに上げて、次の演目を手伝ってもらいます。演目には2種類あります。お父さんと子どもにクラウン風の帽子をかぶせ、皿をまわしてから子どもに皿回しの棒をもたせます。お父さんにはその皿が回り続けるように方法を教えて、自分はジャグリングをやったりします。あにかじめ作っておいたお土産(バルーン)を渡して終わり。もう一つは「中国式人体切断マジック」をやるのですが、説明はネタばれになるのでいたしません。世にも恐ろしいマジックです。終わった後でやはりお土産を渡します。

 マイムの演目で苦い経験があります。「風船の色は?」という演目で、マイムで風船をふくらまして空中に浮かべ子どもに上げるのです。先生が「この風船、何色だろうね?」と聞くと、子ども達は口々に自分の好きな色を言います。ある時、1人の女の子にこの目に見えない風船を上げようとしました。先生が「この風船何色?」と聞いても、その子は何も答えません。そばにいたお母さんが「赤よ。お母さんには赤に見える。赤って言いなさい」と命令しています。すると子どもは不満そうに「だって、風船なんて見えないよ」

 自分の未熟さを恥じた瞬間でした。と同時に子どもたちの感受性や想像力も多様であることを知りました。私はこの子を責めているのではありません。感受性や想像力に乏しいと指摘しているわけでもありません。むしろこの子の正直で素直な感性はすばらしいと思うのです。もちろん私の技術が未熟であったことを認めざるを得ません。しかし、たとえマイムの技術がすばらしくても、風船のマイムを全員が見る必要はないのです。「見たい」という感性もあれば、「見たくない」という感性もあっていい。「見える」という想像力もあっていいし、逆に「見えない」という想像力もあるのではないでしょうか。それに、どんな幼い子も気を使うことがあります。周りの大人の顔色をうかがう子もいます。「見えた」と言った方がクラウンも先生も、そして親も喜んでくれる。仲間たちに同調した方が盛り上がる。そんな計算が無意識に働いている子もいるのです。それもまた周囲の人間の心をおもんぱかる感受性と想像力の賜物です。私がこういうパントマイムをやることに意味があるとすれば、それは子ども達の感受性や想像力を「計る(評価する)」ことではなく、そういう能力を「耕す(刺激する)」ことだと考えます。特に「わかりやすい」ことばかりを重視する今の教育の傾向、メディアの傾向へのアンチテーゼなのです。
 
 客出しは楽し
 
 幼稚園のパフォーマンスでいちばん楽しいのが客出しです。ただでさえステージとステージの間の時間が短いのに、客出しに時間をかけている点については、幼稚園の先生方にたいへんご迷惑をおかけしています。その上、パフォーマンスの時間も常にオーバーしているので、プロでは絶対に許されないことでしょう。しかし、これはアマチュアだからこその私のこだわりでもあります。目線を合わせるために膝をついて、ホールを出て行く子ども達ひとり一人とバイバイをし、ハイタッチしたり握手することがこの上ない私の喜びです。どんなに暑くても、どんなに疲れていても、すべて忘れられるひと時です。
 卒園のみんな元気でね。ちっちゃいみんな来年もまた会おうね。

                                                おわり

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